北海道新聞旭川支社
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ヒューマン

海老子川雄介さん(39)*旭川青年会議所理事長*若者と共に歩むまちづくり*課題解決する人に育って  2017/10/29
えびしがわ・ゆうすけ 
1978年、新潟県上越市生まれ。父親の転勤で道内外の各地に移り住んだ。北海学園大経済学部を卒業。2003年に旭川の広告代理店に就職。独立後の16年3月に大正時代の民家を改装して「福吉カフェ」(旭川市常盤通2)をオープンさせた。17年1月から1年任期で旭川JC理事長。

 高校生が自作のラーメンの味を競う「旭川ラーメン甲子園2017」が10月7日、旭川市平和通買物公園の旭川フードテラス前で開かれ、約千人の来場者を集めた。主催団体の一つ、旭川青年会議所(JC)の海老子川雄介さん(39)に、若者と共に学び歩むまちづくりに懸ける思いを聞いた。(聞き手・旭川報道部 佐藤洋樹、写真・打田達也)

 ――ラーメン甲子園はにぎわいましたね。

 「昨年、旭川空港50周年の記念事業として開かれたのですが、単年度で終わらせるのはもったいないと旭川大の江口ゼミナールに持ちかけ、実現しました。中心市街地の活性化に絡めたいという考えもありました。旭川の5校と幌加内高が参加して、4時間で1800食を売り上げました。でも課題もありましたよ」

 ――課題とは。

 「来場者が食べ比べた評価で優勝を決めますが、味だけの人気投票になりがち。生徒同士のチームワークや創意工夫も評価される仕組みを作りたい。旭川農業高は自分たちで栽培したネギをトッピングに使いました。こうした工夫は、地産地消になり原価も抑えられる。『完成度』が高いラーメンと言えるでしょう」

 ――高校との連携に力を入れています。

 「旭川JCは数年前から産学官が手を取り合おうと活動を進めてきました。高校の先生に話を伺うと、就職活動をする上で企業とのつながりが少ないのが課題だと分かりました。そこで昨年から、高校に出向いたり希望する生徒たちを招いたりして、経済人による講演会を開いています」

 ――どんなことを伝えるのですか。

 「旭川にとって厳しいことも言いますよ。人口で道内第2の都市なのに、法人所得は帯広や苫小牧よりも下位であるとか。そうした問題点を実数で示し、旭川で暮らす当事者として考えてもらい、課題解決型の人材に育ってほしいのです」

 ――そうした発想はどこから。

 「札幌の大学を卒業後、就職に苦労していた時に、大雪山系に登りたいと旭川に来て入ったラーメン店で読んだフリーペーパーで求人案内を見つけ、採用されました。観光振興と移住促進に寄与する仕事がしたくなり、2015年に広告代理業の会社を起こして独立しました。豊かな食材だけでなく、家具に代表されるものづくりや冬の雪だって地域資源。でも若い人は、旭川は自己実現のできないまちだと思い込んではいないだろうか。そうじゃないんだというスイッチを入れたい。私自身が道外出身の『よそ者』だから、余計そう思うのかもしれません」

 ――高校生には卒業したら旭川に残ってほしいですか。

 「就職先を見つけてくれたらそれでいいですが、外に出ることも大歓迎。高校時代に旭川の良さに気づいてもらい、離れたら『旭川は良いところだ』と発信するスピーカーになってほしい。そのことが市外から人を呼ぶことにつながります。まちに魅力がないと思っている自分の考えを、いったん『よそ者』になることで壊す。そんな視点を身につけてほしいのです」


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