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やまわき・ゆういち 1974年、神奈川県茅ケ崎市生まれ。幼いころ旭川に移り、旭川東高を経て道教育大旭川校で美術教育を専攻した。2001年から彫刻美術館の学芸員(08~10年は除く)。 |
中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館(春光5の7)が総工費6億7千万円をかけた全面改修を終え、5年8カ月ぶりに10月8日、再オープンする。激しい老朽化から大工事を経て生まれ変わった彫刻のまち・旭川のシンボル。展示準備に追われる学芸員の山腋雄一さん(43)に館の魅力を聞いた。(聞き手・旭川報道部 佐藤洋樹、写真・打田達也) ――2012年2月から休館していました。待ちに待った再開ですね。 「国の重要文化財『旧旭川偕行社(かいこうしゃ)』2階の大広間(493平方メートル)を広々と使った常設展示室は、悌二郎の全作品12点を中央に配し、その両側に中原悌二郎賞の受賞作品を具象と抽象に分けて並べました。合わせて約50点です。1902年(明治35年)に建てられた旧陸軍第7師団の社交場だった偕行社の歴史を紹介する資料室も新たに設け、当時使われていた屋根の鬼瓦や玄関ポーチを支えた柱頭(柱の上部)などを展示します」 ――転勤族の私は建物に入るのも初めてです。 「大正期に活躍した悌二郎の作品と偕行社の建物が時代的にマッチして、重厚な雰囲気を感じてもらえるでしょう。一方で現代作品と偕行社とは強いコントラストを描き、鑑賞の面白さにつながると思います」 ――旭川に彫刻美術館がある意義とは。 「悌二郎をはじめとする日本近代彫刻の出発点から戦後のオールスターの優れた作品まで、もれなくそろっていることです。市が悌二郎賞の受賞作を買い取っているおかげで、コレクションとして非常に質が高い。しかも常設展示でいつでも見られる。こんな場所は国内を見てもほとんどありません。小中学校で巡回展示や出前授業ができるのも、旭川だからです」 ――山腋さんにとって彫刻とは。 「学生時代は学校教育で子供たちに美術作品をどう理解してもらうかを考える『鑑賞教育』を研究したのですが、対象は絵画中心で彫刻は念頭にありませんでした。学芸員になってみると、彫刻は軟らかい木、ごつごつした石、シャープな金属と、素材も違えば形も表現方法も違って多様性に富んでいる。次から次へと新しい作品が生み出され、自分自身が飽きずに彫刻の世界に触れているという状態です」 ――来館者にメッセージを。 「あらためてのスタート。これまで来たことのない方には、こんな場所にこんな建物があり、こんな作品があったんだと知ってほしい。そして旭川市民の財産として誇りを持っていただきたいと思っています」 ◇ 彫刻美術館は10月8~15日の観覧が無料。記念イベントとして旭川文化芸術巡り(14日、市内一円)、講演会「美術館を核としたまちづくり」(15日、市大雪クリスタルホール)などがある。詳細は同美術館(電)0166・46・6277へ。
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