北海道新聞旭川支社
Hokkaido shimbun press Asahikawa branch

ヒューマン

田中誠也さん(28)、林崎涼さん(30)*上富良野町十勝岳ジオパーク専門員*日本ジオパーク 認定なるか*地球と人の営み伝えたい  2017/09/10
 田中誠也さん(左) たなか・せいや
1989年、名古屋市出身。東北大大学院博士課程に在籍して現在は休学中。専攻は人文地理学。昨年5月、上富良野町ジオパーク専門員になった
林崎涼さん(右) はやしざき・りょう
1986年、埼玉県生まれ。首都大学東京で自然地理学を専攻。昨年6月、上富良野町ジオパーク専門員になった

 日本ジオパーク委員会は9月27日、美瑛、上富良野の両町が申請した十勝岳ジオパーク構想の日本ジオパーク認定について審議する。活火山の十勝岳と麓に広がる丘が貴重な地質、地形と認められ、豊かな自然環境と歴史文化を学んで楽しめる「大地の公園」として発信できるか注目される。認定を目指して活動してきた上富良野町十勝岳ジオパーク専門員の田中誠也さんと林崎涼さんに聞いた。(聞き手・富良野支局 佐々木学、写真も)

 ――上富良野町広報誌のコラム「ジオ林崎・ジオ田中の十勝岳ジオパーク誕生への道」がおもしろいです。これまでの活動は。

 林崎「十勝岳周辺の山や川の成り立ちを調査、研究するほか、ジオパークを町民に知ってもらうため出前講座を開いてきました」

 田中「専門員の仕事は、専門的なことをいかに分かりやすく説明するかです」

 ――十勝岳とは、どんな山なのでしょう。

 林崎「1926年(大正15年)の噴火による泥流で死者・行方不明者144人を出しましたが、これは近代以降の日本で最多の火山犠牲者数です。泥流被害予想を地図で示したハザードマップは86年、国内2番目に作られ、国内で初めて住民に配られました。泥流被害を経験した地として何を発信するかが問われます」

 田中「火山は富士山のような独立峰が多いのですが、十勝岳は連峰を形成しているのも実は珍しい」

 林崎「ナキウサギやアカエゾマツなど寒冷地の貴重な動植物も特徴です」

 ――十勝岳ジオパークが認定される意義は。

 田中「上富良野は大正泥流から復興した歴史があります。観光客が訪れる美瑛の丘は、過去に存在した火山噴火で形成され、開拓者が林を切り開き、畑にしていった。地球と人の営みが現在の風景を作ったことを広く知ってもらえます」

 林崎「上富良野と美瑛の両町は噴火に備え、総合防災訓練をしていますが、町民の交流が少ない。ジオパークで両町が結ばれ、防災、観光、農業、教育などの分野で縦割りではない横のつながりが期待できます」

 ――認定されると、町民は何ができますか。

 林崎「これまで十勝岳を俳句に詠む『ジオ俳句』や泥流の跡を歩くフットパスなどが行われてきました。地域から『ジオパークでこんなことをしたい』と声が上がれば応援したい。他地域ではジオパークブランドの酒や農産物もあります」

 田中「ジオパークを機に観光と農業を結びつけたツアーなどができたら、うれしい。ジオパークで異業種の人たちをつなぐのも私たちの仕事です。ジオパーク活動を支えるサポーターとガイドの養成講座も開きます。地域を知ってもらい、新たな価値が生まれます」


戻る