北海道新聞旭川支社
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ヒューマン

坂本征文さん(72)*旭川市西神楽ホタルの会事務局長*ホタルの里 祭り20回*地域の支えで飼育続け  2017/08/20
さかもと・ゆきふみ
 1945年、オホーツク管内雄武町出身。北海道教育大旭川校を67年に卒業し、教員として小・中学校に勤務。2005年3月に旭川市立緑が丘中校長で退職。「教え子がホタルの会に入って活躍しています」

 「ホタルの里」と呼ばれる旭川市内の西神楽公園で毎年夏、ホタル祭りが開かれている。自然繁殖や人工的に飼育されたヘイケボタル数千匹が輝きを放つ催しで、開催20回目を迎えた7月22~24日には計6千人が訪れた。ホタルの飼育や公園の環境整備、祭りの運営を行う市民団体「旭川市西神楽ホタルの会」の坂本征文事務局長(72)に、活動の意義や会の軌跡について聞いた。(聞き手・五十嵐俊介、写真・舘山国敏)

 ――祭り会場で、たくさんのホタルが舞う光景は幻想的でした。

 「ホタルの光は何度見ても飽きないし、心が癒やされます。祭りは夏の風物詩として定着し、リピーターも多い。旭川や近郊、名寄や富良野、道外からも来ます。夏に成虫となるホタルが輝くのは、一生のうち最後の10日間程度。温暖化の影響か、年々、輝く時期は早まっており今年は祭りの期間を1週間早めました」

 ――地域住民はホタルに対して特別な思い入れがあるようですね。

 「元々は、旭川市立西神楽中の取り組みがきっかけでした。1991年に同校の理科教諭で科学部顧問を務めていた時、部員が『校庭にホタルを飛ばしたい』と研究を開始。地元のヘイケボタルを採集し、校内に装置を設けて飼育もしました。そこで、生徒の親や地元企業が活動を応援し、より大きな飼育施設を整備してくれました。『西神楽にホタルを』が地域の合言葉になっていったのです」

 ――96年にはホタルの会が発足しました。

 「生徒に協力してくれた農業青年や同校PTAが中心となって会員45人で始まりました。公園にホタルが生息するための『せせらぎ』をつくり、同校から幼虫を譲り受けて飼育も始めました。現在、公園内の屋内施設『西神楽パークセンター』で4万~6万匹を飼育する装置があります。幼虫の時に水中で脱皮を繰り返し、上陸、羽化して成虫になれるよう工夫したケースです。水を腐らせないため、ケースを階段式に並べてポンプで組み上げて循環させています」

 ――多くの苦労があったそうですね。

 「自然が相手です。2011年と14年には、高温のため装置の水温が上がり、ミジンコや細菌類が発生し、幼虫が大量死しました。近親交配で個体が弱まっていた影響もあるかもしれません。地元で新たなホタルを採集して一から飼育し直しました」

 ――苦難を経て、地域に支えられホタルの会は発展してきました。

 「かつてあった自然を取り戻そうという思いで続けてきました。運営に携わる正会員と、金銭的に支援してもらう賛助会員、法人会員を合わせて約140人にまで増えています。一同、ホタル祭りを30、40回と続けていく決意です。祭りには親子連れがたくさん来て、子どもが『きれいだね』と喜ぶ。子どもの心を動かして、感受性を豊かに育てることになるのです」


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