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そまだ・みのり 1955年東京都八王子市生まれ。武蔵野美術大卒業後、写真家に。92年に礼文島に移住し、花をテーマに作品を発表。2007年に礼文島自然情報センターを設立、12年にNPO法人格を取得。「礼文 花の島を歩く」など、写真にエッセーを交えた著書が多い。 |
「花の浮島」と呼ばれる礼文島が今年も花の季節を迎えた。この島ならではの貴重な花々が、彩り豊かに咲いている。近年は外来種の増加が目立ち、花の保護も大きな課題。写真家でNPO法人礼文島自然情報センター理事長の杣田美野里さんに現状を聞いた。(聞き手・旭川報道部 西村卓也、写真も) ――礼文島の花の代表格にレブンアツモリソウがありますが、生育環境に変化はありますか。 「島内の鉄府地区に調査区を設定し個体数を測定していますが、年々減少しています。種が粉のように小さく、発芽に必要な栄養分を持っていないため、土の中の『共生菌』から栄養分をもらわなければならない花です。その生育環境が変化していると言えます」 ――原因は何でしょう。 「以前問題になった盗掘は保護活動によって減りましたが、外来種の増加が目立ちます。島外から訪れる人の靴底に付着した種が根付いたり、植林や道路ののり面に張る芝が外来種であったりします。減少の直接の原因とは言い切れませんが、気候の温暖化でササが生育域を広げるなど、環境の変化が影響を与えます」 ――外来種にはどんな花があるのですか。 「セイヨウタンポポが代表的ですね。保護地区なので、環境省などの許可を得て1本ずつ手で抜いていく作業を続けています。ただ、私はタンポポといえども、花には違いないと思います。私自身、30年近く前に移住してきた『外来種』なものですから、タンポポのたくましさに感心するところもあるんです」 ――移住の決断はどのように? 「フリーの写真家をしていた時、旅行で礼文島を訪れ、花の美しさに魅了されました。私は体力や運動神経で勝負するより、じっくり掘り下げるタイプなので、動物より花が専門分野にふさわしい。その格好の舞台が礼文島でした」 ――花が本当に好きなんですね。 「よく見ると新しい発見が毎年あるんですよ。エゾノハクサンイチゲの花にヒマワリのような向日性があることに気付いたり、同じ時期に咲くネムロシオガマとミヤマキンポウゲの開花時期が微妙にずれたり重なったりします。そんな変化に刺激を受けて写真を撮っています。花は自らが受粉するために咲いているだけなのに、なぜ人間にとってこんなに魅力的なんだろうと考えてしまいます」 ――島に長年住んで、外から訪れる人にどんなことを伝えたいですか。 「繰り返し訪れて、いろんな季節を見てほしいと思います。年齢や体力に合わせてさまざまな散策路があるので、島のいろいろな姿を楽しんでほしいですね」
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