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いとう・かおり 1973年生まれ。酪農学園大卒業後、自然体験学習を展開するNPO法人ねおす(札幌)の職員などを経て、2007年に稚内市上勇知に移住。夫輝之さん(50)は、勇知地区で野遊びの魅力を伝える「ゆうち自然学校」を開いている。2児の母。カヤニは米アラスカの先住民族の言葉で「植物の魂」の意味という。 |
稚内市上勇知で市内唯一の養鶏場「カヤニファーム」を営む。鶏の餌に利尻昆布など地元産の素材を配合して生産する無添加の卵は、稚内近郊のほか全国からも注文がある。多くの需要に応えるため、現在新たな鶏舎を建設中だ。10年前の稚内への移住を機に翌年、一から養鶏場を営み始めた代表の伊藤香織さんに、当時の苦労や今後の抱負を聞いた。(聞き手・稚内支局 広田まさの) ――札幌出身ながら、なぜ稚内で養鶏を始めたのですか。 「以前から(自給自足の)『農的』な暮らしに興味がありました。道内の農家を見て回っていた時、たまたま稚内の養鶏場を引き継がないかという話が舞い込んできたんです。養鶏は未経験でしたが、本を読みあさるうちに将来の生活が具体的に描けたのも大きかった。実際に現地を見て、環境も気に入ったので移住を決めました」 ――最初は苦労したのでは。 「ひよこを育てるのも初めて。最初の冬は100羽ほど飼いましたが、寒さで半分以上も死にました。次々に動かなくなる姿を見て、途方に暮れる毎日でした。鶏舎を白熱電球で暖めていましたが、それだけでは足りなかったんです。米ぬかや水を混ぜ、約50度の高温に発酵させた土を鶏舎に敷くことで、翌年から無事に育つようになりました」 ――卵には宗谷の素材が凝縮していますね。 「餌に利尻昆布や宗谷近海のサケなどを配合し、昨年から『宗谷のしおかぜたまご』としてブランド商品化しました。無添加で、体調が悪い時でも食べられると好評です。現在、地元のスーパーや飲食店など計十数店舗で取り扱っていて、本州からのお取り寄せもあります。現在270羽の鶏を育てていますが、1日に生産できるのは200個前後。需要に応えられないことがよくあり、生産個数を増やすため、インターネットのクラウドファンディングで新たな鶏舎の建設資金を募りました」 ――反応はいかがでしたか。 「60日間で100万円が集まりました。驚いたのは、支援していただいた75人のうち8割が市内や近郊に住む方だったこと。地元に愛されていたと分かり、感無量でした。資金を活用して、現在さらに約180羽を飼育できる鶏舎を建てており、5月中に完成する予定です」 ――今後の抱負は。 「多くの方に支援され、責任も感じています。生産数を増やし、まずは近隣の方に安定的に届けたい。地元の人が自慢できる卵を作り続け、いずれ『宗谷のしおかぜたまご』が手土産として定着し、全国各地に届くといいなと思っています」
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