|
たなか・あや 1970年、札幌市生まれ。北大文学部を卒業後、北海学園大大学院文学研究科修士課程を修了。2008年から北海学園大人文学部准教授、14年から同教授。専門は近現代文学史。歌人。三浦綾子記念文化財団理事で、17年3月に三浦綾子記念文学館館長に就任。 |
旭川出身の作家三浦綾子さん(1922~99年)の功績を伝える旭川市の三浦綾子記念文学館。作品を知らない若い世代が増える中、3代目館長となった北海学園大学教授の田中綾さん(47)=札幌市在住=は、動画を活用したPR、文学フリマへの出店などの新企画に取り組む。三浦文学の継承の課題や思いを聞いた。(聞き手・旭川報道部石橋治佳、写真・野沢俊介) ――館長に就任してから2カ月を迎えます。 「就任前は不安もありましたが、楽しいです。文学を伝えていくという使命と、全国の皆さんに伝えるチャンスがある。ありがたいことだと思います。ただ、ファン層は年配の方が多いと改めて感じています」 ――若い世代への伝承についてどう考えますか。 「若者が昭和の作家の作品を読む機会は、なかなかないと思います。私が大学で指導をしている文学を学ぶ学生たちでも、ここ数年は三浦文学を読んだことがない人がほとんど。さまざまな手法で、魅力や読みどころを薦めたいです」 ――動画を使った発信は取り組みの一つですね。 「大学や高校で普及が進んでいる『反転授業』から考えました。事前に3分程度の予習用動画を見てもらってから授業を受けてもらう形式で、北海学園大でも取り入れています。同じように作品を読んでもらう前などに動画を見てもらうことで、学生たちの探求心を引き出したいのです。企画展をPRする3分ほどの動画を作ります。第1弾は6月に始まる小説『細川ガラシャ夫人』の企画展で、5月末に公開します」 ――文学館のホームページには、館長特設サイト「綾歌」が開設されました。 「アクセス数が増えてきました。動画の配信やコラム掲載など、月1回以上は更新します。親しみやすさを出し、気軽に文学館を訪れてもらいたい。文学館がワクワクできる場所であることを発信したいです」 ――他に、どのような取り組みを考えていますか。 「7月に、札幌で開かれる『文学フリマ』に文学館として出店します。プロやアマチュアが文学作品を持ち寄る販売会として全国で広がっていて、道内では昨年が初開催でした。出店者も来場者も年齢層が広く、全国から来ます。本を売るだけではなく、文学館の活動と来年で開館20周年を迎えることを知らせたい。また道内の大学生が参加する書評合戦『ビブリオバトル』の大会を、文学館で開催できないか打診中です」 ――6月に20周年記念事業の実行委が発足します。 「記念誌発行、展示リニューアル、分館建設などさまざまな企画があります。次世代にバトンを渡すため次の20年にどう向かっていくか、知恵を出し合います」
|