|
あおき・ひでとし 1949年、釧路管内弟子屈町生まれ。心臓血管外科医。北大医学部を卒業後、道内外の病院を経て、82年から市立旭川病院に勤務。2006年に院長、09年から事業管理者を併任、15年に院長を退任。現在も週1回、市立旭川病院と江丹別診療所で患者を診ている。 |
厳しい経営が続く市立旭川病院。2016年度決算は21年連続の赤字となる見込みで、医師不足や患者減少など重い課題を抱え、経営改善は待ったなしの状況にある。地域医療を守りながら黒字転換する方策はあるのか。経営のトップに立つ事業管理者の青木秀俊さんに、改革にかける思いを聞いた。(聞き手・久保田昌子、写真・打田達也) ――病院事業会計の貯金に当たる資金残高が、本年度にも底をつきます。 「かつて約30億円あった資金残高が、ここ10年ほどで無くなることになった要因はさまざまです。国の医療費抑制策に基づく診療報酬の改定や、消費増税。08年のリーマンショック以降、患者の受診控えが強まったことも影響しています」 ――資金残高がマイナスになるとどうなりますか。 「赤字を補填(ほてん)するため、市のほかの会計や金融機関から借り入れをしなければならなくなります。これは初の事態。経営危機であり、早急な改善が必要です」 ――改善の方策は。 「何と言っても収益を上げること。強みであるがん治療や臓器移植、精神疾患治療を充実させ、『断らない救急医療』を実践します。実現には職員の意識改革が必要。そこで昨年から『バランスト・スコアカード』を導入しました。企業が生産性向上のために用いる評価手法で、職員に数値目標を掲げさせ、成果に結びつく行動を求めます。この4月には、現場の医師が参加する経営会議も新設しました。いいアイデアはどんどん取り入れていきます」 ――昨年末に旭川医大と結んだ連携協定の中身は。 「近く本格的な打ち合わせをしますが、医師不足で入院病棟を休床している整形外科をはじめ、診療体制の弱い部分への医師派遣などの応援を期待しています。大学が経営をV字回復させた経験を踏まえ、実効性のあるアドバイスをもらいたいと考えています」 ――旭川は医療機関が充実しており、公立病院不要論も聞こえてきます。 「公立病院は地域医療を守る最後のとりで。採算面から民間が敬遠するような医療を確保する使命があります。だから赤字でもいいということではなく、厳しい財政下でも良質でレベルの高い医療を提供し、選ばれる病院を目指します」 ――医師としての信条は。 「メスを握っていた約30年前は、医療技術が今ほど発達していませんでした。手術が成功して喜んだのもつかの間、次の手術で患者さんが亡くなり、どん底に突き落とされる。その繰り返しでした。手術は引退しましたが、昔、担当した患者さんは今も元気で私の担当する外来に来てくれます。患者さんと共に生きること。それが今の支えです」
|