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もり・ただひろ
1963年、上川管内上富良野町生まれ。旭川大経済学部を卒業後、東京での音楽活動を経て旭川市内の楽器店に就職。1996年にミュージカル劇団「BREATH(ブレス)」を立ち上げ、活動を続けている。旭川市内でバーを経営。妻と二人暮らし。 |
今年で開園50周年を迎える旭山動物園。国内外から来園客を集め、旭川を代表する観光名所となった背景には市民の熱心な支えがあった。その代表格と言えるNPO法人「旭山動物園くらぶ」の活動は今年で20年。理事長の森禎宏さんに動物園と連携したまちづくりへの思いを聞いた。(聞き手・旭川報道部 西村卓也、写真・打田達也) ――この20年の間に来園者数は増えましたね。 「以前はペンギン散歩の観客にお汁粉や豚汁を配るなどの協力をしていました。来園者が増え、園内にある私たちの売店の売り上げが伸びて、無料休憩所を設置するなど物的支援ができるようになりました。インドネシアのボルネオ島でゾウが住む森を再生する事業にも資金を出しています」 ――活動は教育分野にも広がっているようですね。 「バスをレンタルして小学生を動物園に招き、学芸員の話を聞いて命の大切さを学ぶ事業をしています。園内の『こども牧場』のコーナーでは、子どもたちがモルモットやウサギなどの動物を抱いて、心臓の音に耳を澄ませ、体温を感じ取る。動物も人間と同じで、生命に優劣がないことを知ってもらうのです」 ――「命」にこだわる理由は。 「私は旭川市内で劇団を主宰し、演出、脚本を担当しています。生きる喜びを表現するのが主なテーマ。実は、人間って奇跡の生命体だと私は思うんです。たとえば、東京と米国から飛び立ったハエが太平洋上で出会うよりももっと低い確率で命が誕生している、なんて考えてしまうんです。動物園の支援と演劇活動は命をつないでいくという点で共通しています」 ――いま、会員は何人いるのですか。 「約770人。個人、法人から年会費を徴収していますが、運営費には使わず、動物園の施設整備や動物の購入のための『もっと夢』基金に寄付しています。会の運営は売店の売り上げでまかなっています」 ――旭山動物園は旭川の重要な観光資源として定着しましたね。 「そうですね。でも、まだ市内の観光地は点のままで、線でつながっていない気がします。現在、空港で動物園のビデオを放映していますが、JR旭川駅の周辺でもPRできるようにして、動物園やその他の観光施設を回れるルート作りを進めたいと思います」 ――動物園の次の半世紀はどうなるでしょう。 「道北地域に住む人々にもっと来てほしい。道内でも札幌や釧路などにも動物園があり、地域でそれぞれの役割を担っています。旭山動物園は道北。今は旭川市内にとどまっているバスレンタルも道北各地に広げられればと思います」
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