北海道新聞旭川支社
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ヒューマン

豊島誓子さん(64)*自主夜間中学「旭川遠友塾」の筆頭代表*「学びたい」に応えたい*自尊心取り戻す生徒祝福  2016/12/11
とよしま・せいこ
1952年、上川町生まれ。道教大旭川校を卒業後、小学校教諭に。遠軽町の東社名淵小など7校で教えた後、13年に東神楽町の東聖小で定年を迎えた。08年から旭川遠友塾の事務局長を務め、16年3月から筆頭代表。塾の連絡先は(電)0166・84・5015

 戦後の激動や家庭の事情に翻弄(ほんろう)され、小・中学校へ満足に通えなかった人たちがもう一度、仲間とともに学べる場所を―。2008年に設立された旭川初の自主夜間中学「旭川遠友塾」の発起人で、今年の3月から筆頭代表を務める豊島誓子さんに、活動にかける思いを聞いた。(聞き手・川上舞、写真も)

 ――小学校教師の傍ら遠友塾の開校、運営に尽力されました。きっかけを教えてください。

 「自主夜間中学をモチーフにした映画を見て興味を持ち、10年ほど前に札幌の夜間中学へ見学に行ったことです。進学や就職への手段ではなく、幅広い年齢の人が学びたい一心で勉強する姿を目の当たりにして、感銘を受けました。稚内から札幌まで通っている人もいて、旭川でも需要があるのではと考えました」

 ――準備から開校まで1年足らずです。

 「まずはニーズを調べようと07年に準備委員会を立ち上げ、すぐに約15人もの賛同者が集まりました。初めは私自身が定年となる13年ごろの開校を考えましたが、元旭川東高校長の加藤卓三さんの後押しもあり、翌08年4月に開校。小学校教員の傍ら塾の事務局長を務めました。道教大旭川校の古野(この)博明教授(当時)が代表を引き受けてくださり、力を合わせて運営してきました。現在は全国に約220人いる会員からの賛助金で運営しています」

 ――8年間で約150人の生徒を迎えてきました。

 「生徒の中には漢字が読めず、計算ができない方も多くいます。会社勤めをこなし、立派に子どもを育てながら、どこか心にコンプレックスを抱え続けきた方々です。そんな生徒が、学びを通して自尊心を取り戻す様子に立ち会えることが、何よりのやりがいです」

 ――印象的な生徒は。

 「当塾を卒業後、初めて高校に進学された60代の生徒さんです。彼女は入学当初アルファベットが読めず、級友とローマ字で文通をして勉強。今は市内の定時制高校に通っています。ローマ字打ちが必要なパソコン検定試験の合格も果たしました」

 ――自主夜間中学で教えて困難を感じることは。

 「塾のスタッフは元教員が多く、自らの経験を基に作り上げた教育方法で指導しがちです。当塾の生徒の教育水準はばらばらで、学校や教師に不信感のある方も多い。生徒である一方、人生の先輩でもあります。自分のやり方にとらわれず、生徒とコミュニケーションを取って互いに学び合うことを意識しています」

 ――これからの旭川遠友塾についての考えは。

 「塾には30~70歳代の生徒20人がいて、毎週土曜日の夕方、英数国の3科目を学んでいます。今後は、事情があって学校に通えなかったり、不登校だった若者たちにも当塾の存在を知ってもらいたい。受験や就職に直結する勉強はできませんが、社会とつながる足がかりとして、塾に参加してほしいですね」


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