北海道新聞旭川支社
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ヒューマン

渡辺直行さん(64)*旭川家具工業協同組合理事長*「旭川デザインウイーク」主催*機能美もっと伸ばせる 2016/08/06
わたなべ・なおゆき
1951年、札幌市生まれ。東京造形大卒業後、インテリアセンター(カンディハウスの前身)入社。米国の現地法人総支配人、カンディハウス社長などを経て2013年から会長。趣味はゴルフ。

 6月下旬に旭川で開かれた家具とデザインのイベント「ASAHIKAWA DESIGN WEEK(旭川デザインウイーク)」。トークイベントなどを通じ、家具産地・旭川の豊かな森林資源や高い技能などが参加者から評価された。主催団体の旭川家具工業協同組合理事長の渡辺直行さんは、その産地としての強みを生かし、旭川を発展させるカギは「デザイン」と強調する。その言葉に込めた思いを聞いた。(聞き手・藤田香織里、写真・打田達也)

 ――家具産地旭川の強みを、どう考えますか。

 豊かな森林資源に恵まれています。家具製造に向いている広葉樹が多いのも特徴です。そしていい職人がいる。コアコンピタンス(中核となる強み)は、長年培われた技能です。技能とデザインが両輪で機能してこそ、いい物がうまれる。世界的に見れば、旭川家具のデザインはもっと伸ばせるし、伸ばさないといけない。そもそも、旭川はデザインに向いている土地と思う。可能性を秘めているのです。

 ――向いているとは。

 すぐれたデザインとは、ただ美しいことではありません。使いやすさ、機能性も備えていないと。デザインするということは、研ぎ澄ました五感により、美しい物、使い込んでもらえる物を感じ取ることだと思う。寒暖差が大きい旭川の冬の寒さと降りしきる雪、短い夏に広がる青空…。厳しい自然の中に身を置いた方が感覚が磨かれるのでは。

 ――デザイン重視を訴え、支部長を務める北海道中小企業家同友会道北あさひかわ支部の会員企業では国外視察を行っていますね。

 外から見てこそ、会社や地域の強みが分かる。今年は、洗練されたデザインで注目される北欧に行きました。デンマークのデザインミュージアムでは日本文化の企画展示をやっていたし、ジュエリーブランドでも、日本の伝統文化から影響を受けているとの説明を受けました。外国では、日本が培った美意識から、さまざまな影響を受けていることに気付かされます。

 ――憧れを持たれることは、特に国外での販路開拓の際に強みになりますね。

 国内の家具市場は縮小傾向が続いています。国内でもがんばりつつ、外に出て、土俵を広げていくしなかい。また、世界的に見ると、家具製造は中国などアジアの人件費が抑えられる地域に生産拠点が移る傾向にあります。旭川で家具を作り、売り続けるためにも、デザインをより洗練させ、認知してもらうことも大切です。世界が相手という意味では、旭川は空港があることも強みですね。

 ――旭川デザインウイークは昨年、従来の旭川家具産地展を一新して、デザインに関する展示や企画を充実させたイベントです。

 多くの市民に来てもらい、デザインを身近に感じてほしいと考えました。イベントを通じて地域を盛り上げたいとも思いました。今年の来場者は前年比1・8倍の1万500人。3年に1度の「国際家具デザインフェア旭川」は来夏、10回目を迎えます。旭川は地方都市の割に、デザインに関するイベントが多いと思う。建築家など多様な人が集まれば、面白い化学反応が起きるかもしれない。デザインを通じて地域を活性化できればと考えています。デザインは、それほど可能性があると思うのです。


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