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うえだ・さとし
1961年、苫前町生まれ。留萌高を経て日体大卒。羽幌中教諭を務めた後、高校に移り、札幌工業高、厚真高、釧路東高などに勤務。4月に室蘭清水丘高教頭から天売高校長に就任。大学まで続けた剣道は6段の腕前。 |
羽幌町の町立天売高は全校生徒5人、道内で最も小さな高校だ。本年度入試から募集地域を初めて全国に広げ、4月に東京と札幌から1人ずつの新入生を迎えた。人口325人(5月末現在)、過疎化と少子化が進む天売島民にとって、高校は島に活気をもたらす欠かせない存在だ。4月に赴任した上田智史校長を訪ねた。(聞き手・旭川報道部 竹村康治、写真も) ――島の生活はいかがですか。 養護教諭だった妻は天売小(当時)が初任地、私も羽幌中が教員生活の振り出しで、ホームグラウンドに戻ってきたという気持ちです。生徒はもちろん、住民との距離がとても近く、顔が見える生活環境はとても新鮮です。地域が学校を支え、大事にしていることが伝わってきます。妻と小学6年の三男とやってきましたが、港で島の人たちが横断幕を掲げて出迎えてくれ感激しました。 ――3人の新入生のうち、2人は島外からですね。 天売高は夜間定時制で、生徒5人全員が働きながら通学しています。東京出身の男子生徒は天売小中学校の公務補、札幌出身の女子生徒は保育士手伝いをしており、休まず仕事をがんばっています。2人ともしっかりと自分を持ち、強い意志があると感じています。 ――教育活動の特色は。 普通科ですが、地域を担う人材を育てるため、水産の科目を設け、カレイやタコのくん製作り、ウニの缶詰作りといった水産実習を行っています。2年前には外部の民間講師を招き、地域の歴史や文化、自然、産業を学ぶ土曜授業「天売学」を導入しました。6月は天売の観光を学ぶため、船で島を一周、オロロン鳥を見ることができました。 ――生徒と接する時に心掛けていることは。 教職員9人全員が生徒一人一人としっかりと向き合い、大切に育てようと思っています。特に島外からの生徒が寂しさを感じて学校に足が向かなくならないよう、背中を押して支えてあげるのが私たちの役目です。生徒が登校する午後4時すぎには教職員全員で出迎え、下校する午後10時も全員で見送ります。 ――全国募集2年目になります。 以前は「天売に高校があるのですか」という声も聞いたそうですが、認知度はかなり高まっており、問い合わせはあります。ただ、離島という特殊な環境で、親元を離れて働き、夜に学校に通う生活は大変で、だれでもというわけにはいきません。オープンスクールで理解を深めてもらうなど、慎重に進めていきます。島での生徒の仕事、下宿先の確保も課題です。外から来た卒業生が一度島を出た後、再び戻ってくれればうれしいですね。
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