北海道新聞旭川支社
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ヒューマン

井上俊一さん(54)*NPO法人ピーシーズ理事長*「旭川版フードバンク」計画*障害者就労につなげる    2016/05/29
いのうえ・しゅんいち
1961年、福岡県瀬高町(現・みやま市)生まれ。大学卒業後、自動車メーカーの開発部門や福岡市のコンピューター関連会社で働く。2006年、妻の出身地の旭川市で社会福祉法人の設立に関わり、障害者施設の運営に携わる。今年2月にNPO法人ピーシーズ((電)0166・76・1994)を設立。

 賞味期限が迫ったり、包装が破損したりして、流通できなくなった食品を回収し、福祉施設や困窮家庭などに届けるフードバンク活動。旭川のNPO法人ピーシーズは、障害者の就労訓練を組み合わせた独自の「旭川版フードバンク」を計画、7月スタートに向けて準備を進めている。井上俊一理事長(54)に活動の狙いや仕組みなどを聞いた。(聞き手・旭川報道部 竹村康治、写真・小室泰規)

 ――なぜ活動を始めようと。

 目的は障害者の就労支援です。就労機会が極めて少ない現状を変えるため、食べ物に困っている人を手助けする受け皿をつくり、そこに障害者が関わる仕組みを考えました。食品の回収、仕分け、配達、出荷管理といった作業の経験を重ね、流通業などへの就労につなげたいと思っています。

 ――食品はどこから提供してもらうのですか。

 主にスーパーなどの量販店、食品製造業を想定しています。3月から市内の量販店を中心に回り、協力をお願いし、野菜農家にも規格外品の提供を要請しています。このほか、贈答品など家庭で余っている食品を市民から提供してもらう計画です。賞味期限の残存期間は1カ月程度を想定していますが、旭川の都市規模ならもっと短くても届けられると思います。

 ――回収後の流れは。

 定期的に回収した食品はNPOの貯蔵スペースで保管、仕分けをして、障害者施設やグループホーム、児童養護施設など5団体に配達します。食品は無償ですが、配達先から手数料をいただき、作業に携わる障害者に支給します。当初は5人でスタートし、最終的に20人に拡大する計画です。また、日々の食事に困っている困窮世帯に食品を届けるための仕組みを、市と相談してつくりたいと考えています。

 ――運営資金はどうしますか。

 企業が運営面の支援もしている都市部のフードバンクと異なり、地方では手弁当でやっている団体が多いのが実態です。旭川の場合は障害者の就労支援事業の国の給付金を充てます。さらに日本政策金融公庫のソーシャルビジネス支援の融資も決まりました。市内には食品関連の会社が多く、協力が得られれば運営は可能だと思っています。

 ――課題は。

 フードバンクの認知度を高めることです。企業はお金をかけて期限切れ食品を廃棄していますが、その前に見切ってもらえば費用もかからず、社会貢献になります。「もったいない」の意識を広めるとともに、「必要なところに確実に届く」仕組みを構築し、企業に協力を呼びかけていきたい。旭川のモデルケースを成功させ、他の地方都市に広がればと思っています。


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