|
ただ・まさえ
1947年、上富良野町生まれ。農家の9人きょうだいの下から2番目で「元から植物が好き」という。道内最大級のランの展示会「らんフェスタ赤平」で2003年と15年に最高賞を受賞し、審査員も務める。富良野蘭友会の会員は現在12人。 |
4月に赤平市で開かれた道内最大級のラン展示会「らんフェスタ赤平」で、富良野蘭友会員の作品が、入賞17点のうち最高賞「ゴールデンリボン賞」を含む5点に選ばれた。指導したのは同会の会長で、富良野市の農業多田マサエさん(69)。約30年にわたって趣味で育て、昨年の同大会では自身2度目の最高賞に輝いた。多田さんに富良野勢活躍の要因や、栽培の魅力を聞いた。(聞き手・富良野支局 松下文音、写真も) ――富良野蘭友会から、2年連続の最高賞です。 「大会は、コチョウラン、デンドロビューム、カトレア、パフィオペディルム、その他の5分類から各5点が選ばれ、その中から最高賞1点が決まります。今年の出品は464点。最高賞は珍しく、2年続けてデンドロでした。富良野は昨年も7点が入賞しました」 ――好調の理由は。 「栽培に重要なのは温度管理。富良野は農家が多く、農業の知識が生きます。田んぼも暑い時は水を入れるし、乾燥させないと根が腐りますよね。出品時は葉を磨き、生け花のように花の向きを整え、全体のバランスや鉢も考えて『嫁に行くようにきれいに』と伝えます。同じ花を出しても評価が変わりますよ。栽培して試すうち、枝を増やす方法も見つけました。これは富良野だけの秘密です」 ――自宅のビニールハウス1棟で育てています。 「千鉢はあるでしょうか。30年ほど前に友達の家で、素晴らしいコチョウランを見たのがきっかけです。本を参考に独学で育てました。わが子と同じで、顔を見れば必要な水の量も分かります。大会は開花時期を合わせるのが大変。例えばコチョウランは10月に花芽を全てもぎ、2月から咲くよう調整します。昨年に私が最高賞を受けたデンドロは、花が持つのは4日間だけ。上部から咲くので、涼しい場所で上からこもをかぶせ、下部はサーチライトをあてて、大会初日に満開にしました」 ――交配や培養にも取り組んできたそうですね。 「興味がありました。ランは交配した種を、栄養素を含んだ培地にまいて苗を作ります。自宅にある横80センチ、高さ50センチ、奥行き70センチの無菌培養設備の中で、フラスコに寒天や果物の汁などを煮詰めて作った培地を入れるのですが、この培地作りが難しい。最初は種が発芽するようにリン酸とカリを多くし、芽が出たら何万の中から良い苗を25本ほど選んで、今度は葉が出るように窒素を多くした培地に移します。蛍光灯を24時間あて、少しでも雑菌が入るとかびる。培養は最近、専門家に任せています」 ――ラン栽培の魅力を教えてください。 「やはり豪華で、生命力があります。初心者はまず、温室がなくても育てやすいコチョウランがおすすめです。温度によりますが、水やりは寒い時期なら1カ月1回、暖かい部屋なら1週間に1回。草花の4分の1程度でいいですよ」
|