北海道新聞旭川支社
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ヒューマン

泊和幸さん(61)*遠別町の写真家*野鳥を撮り続け43年*自然の宝庫 魅力を発信    2016/04/10
とまり・かずゆき
 1955年、遠別町生まれ。遠別農業高卒。農業を営む傍ら、地元でワシを中心に写真を撮り続ける。2009年に日本写真協会会員。道の鳥獣保護員も務める。昨年は札幌と東京・銀座で作品展を開催した。写真集に「海ワシ物語」(源草社)など。

 遠別町の写真家泊和幸さん(61)が3冊目の写真集「飛べない白鳥 ハク」を彩流社(東京)から出版した。地元でオオワシなどの猛禽(もうきん)類を中心に野鳥を撮影して43年。旭川や東京で写真展を開くなど精力的に活動している。道北の厳しい自然を生き抜く野鳥を観察、撮影する魅力を聞いた。(聞き手・天塩支局 山野辺享、写真も)

 ――旭川で先月下旬に開いた写真展は好評でした。

 「先月出版した『ハク』の写真を中心に展示しました。ハクは昨年5月、遠別で見つけた羽の折れたオオハクチョウのことで、私が名付けました。写真はシベリアに帰れず、必死に生きるハクの半年間の記録です。保護を求める旅行者らの声を受け、ハクは最終的に行政の手で越冬可能な苫小牧のウトナイ湖に移されました。ただ、人の手によって生かされることが本当に良かったのか。仮に死が訪れても、自然に任せるべきではなかったのか。私自身、野生か、保護かで悩みました。写真展の来場者にはハクを通じ、命について考えてもらえたと思います」

 ――野鳥の撮影を始めたきっかけを教えてください。

 「遠別農業高3年の時、遠別川付近で十数羽のオオワシとオジロワシに出合いました。雪が降って私が見えにくかったのか、30メートルほどに近づけました。大きなワシがじっと見つめ返してきます。その瞬間、時が止まった感じがして、心が熱くなりました。空の王者のワシには威厳があり、近寄りがたい存在感があります。姿は神秘的で、その生きざまを写真で多くの人に伝えたいと思ったのです」

 ――会心の作品を教えてください。

 「5年ほど前に撮影したオオワシがキツネを捕らえる瞬間でしょうか。両者が激しい縄張り争いをして威嚇し、雪の上で組み合っています。その間、30秒ぐらい。撮影する時は、はやる気持ちを抑えて、自らの気配を消さなければなりません。躍動感あふれる作品が撮れ、心の中でガッツポーズをしました」

 ――昨年9月に町の起業家支援制度を利用して、株式会社を立ち上げました。

 「野生動物の写真や映像を撮影、販売する『野生塾』です。遠別とその周辺はまさに自然の宝庫です。さまざまな動物が生き、その頂点にワシやヒグマがいる。つまり食物連鎖がしっかりしている。この地域の魅力を広く発信するために起業しました」

 ――今後の抱負を教えてください。

 「会社では自然体験型の塾や講座を開き、この地域のファンを増やしたい。写真や映像などのギャラリーも開設し、野生塾で活動する人の拠点にしたい。写真家としては、ヒグマやキツネでも代表作と呼べるぐらいの写真を撮りたいですね」


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