1月半ばに佐賀県を旅行した。3日目のお昼に小城(おぎ)市の古民家カフェに寄った。客が少なかったせいか、店主が気軽に話しかけてきた。「北海道から来ました」と告げた途端、急に身を乗り出して「実は北海道がブラックアウトの時に応援に行きました」と言う。 店主は九州電力のOBで、要請に応じて高圧発電機を運び、道内での作業に当たったそうだ。あの最中、わが家は40時間も停電したため、解け始めた冷凍庫の食材を食べ切ることに頭がいっぱいで、全国の電力会社から応援が来ていたことなど知る由もなかった。はるばる九州からも駆けつけてくれたとは。せんえつながら道民を代表してお礼を申し上げた。 さらに注文したそばランチを食べ始めると、実はそのそばは幌加内産だという。数あるそば粉を取り寄せて試した結果、幌加内産に決めたそうだ。私たちも幌加内に関する知識を総動員して話を盛り上げ、会話は続いた。 午後は吉野ケ里(よしのがり)遺跡訪問を予定していたので時間が気になるほど会話が止まらない。そんなこともあって佐賀県に親しみを感じ、風景、伝統工芸、遺跡、食べ物、どれも素晴らしく、とても満足して帰ってきた。 今、新型コロナウイルス感染が広がる北海道のことを、あの店主は案じてくれているような気がする。
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