透き通った高く真っ青な空。流氷で埋め尽くされた海は、水平線まで真っ白。放射冷却で冷え込んだ日の足元は、踏みしめる度にキュッキュッと、雪が言う。時折吹く海を渡る風は凍っていて、頬に痛い。 オホーツクの冬だ。 息のできないほどの猛吹雪で、1階の窓が吹きだまりでふさがる。ストーブの排気筒が埋まらないように積もった雪をかき分けながら、その周りを除雪する。風向きが変わるのにホッとし、予報とにらめっこする深夜。 これも、オホーツクの冬だ。 1カ月足らずで、今年もあの日がやって来る。東日本大震災が起きた2011年3月11日。僕は家でつけっぱなしのテレビをチラ見しながら、その日、入っていた予約の料理手順をぼんやり考えていた。 生まれて初めて目にする恐ろしい光景。真っ黒な海が押し寄せ、夜の闇に火の手が上がる。東北はこれから春という季節で、花が咲き、徐々に彩り豊かになっていこうという時期。震災は、いつも変わらないはずの季節の移ろいを、その日、壊してしまった。 しかし、被災した梅に花がつき、海に魚が戻った。一方で、なおも4万8千人もの人々が避難している現実がある。 厳冬が去り、春は必ずやってくることを忘れないでいたい。
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