実は私は旭川という街があまり好きではなかった。 函館に生まれ、旭川に来て48年にもなるが、何の魅力も、感動も感じなかった。ところが昨年、高知の友人夫妻を案内したときに、つくづく思った。やはり旭川はすてきな街だ。 四季折々の晴れた日に見える大雪山系の秀麗な山容や十勝岳連峰の美しさは、道内のどの都市にもない眺望で、周辺にはシラカバ林が何キロも続く白金温泉、優美な羽衣の滝がある天人峡、雄大な峡谷美の層雲峡など、素晴らしい景色の温泉地を見ることができる。 上川盆地を見渡せる男山自然公園、山一つが桜に覆われる旭山公園は、私と妻のデートスポットだった。日本初の歩行者天国の平和通買物公園もある。 「日本一寒い」とも言われ、長い冬の間、人々は耐えることを学ぶ。そこには春を「待つ」積極的な姿勢があり、夢と希望がある。春を迎える喜びは、北国の人でなければ分からない。 作家・三浦綾子さんも、かつて数々の出版社から「東京に来ないか」と何度も誘われたものの、旭川を出る気にはなれず、「こんな素晴らしい街がどこにあろうか」と記している。 新鮮な農産物、全道の海から集まる魚介類、四季がはっきり感じ取れる街―。郷土とは愛すれば愛するほど、良いところが見えてくるものなのだと実感した。
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