椅子に座ってゆっくり上る1、2人乗りのスキーリフトが好きだ。周りの木々より高くなく、地上ギリギリでもなく、ちょうど森の中を空中散歩するように進む。 支柱にはワイヤを支える輪がついている。そこを通りすぎるときに「コンコンコン…」と静かに揺れるのも、なんだか趣がある。 とにかく何本でも滑りたくて、降車駅までがじれったい時間でしかたなかった記憶もあるが、いつしかそういう焦りは消えた。40歳代半ばを過ぎた年のせいかも知れない。 雪景色を見下ろすと、新雪にキツネの足跡をよく見る。中型犬ほどの踏み跡が一直線に並んでいる。二つずつ対になって木々をぬうように点々と続くのはクロテンだ。 尾根の向こうから吹き上げる北風にのって上昇してくるのはオオワシ。黒をベースにして、翼の一部と尾羽が真っ白で格好良い。翼を広げると2メートルもある大きさは、遠すぎるとよく分からないが、ヨロヨロと飛んでいるトビとは全く違う安定感と風格がある。 折り返しのリフトは普通は空だが、降り場で働いていた人がたまにそれに乗って下ってくる。いつかリフトで下ってみたい。できるなら上って下ってリフトでグルグル回ってみたい。子どもに打ち明けたら笑われそうだけれど。
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