数年前、「ひとつのことば」という詩に出合いました。 「ひとつのことばで けんかして ひとつのことばで なかなおり」で始まるこの詩は、「ひとつのことば」によって「頭が下がり」「心が痛む」ことがあり、「楽しく笑い」「泣かされる」と続きます。言葉は、人間を支配する力を持っているのです。 乱暴な言葉遣いは凶器です。人を傷つけ、まるでナイフのように、人の心を切り裂くことがあるのです。宗教の教えにもあるように、人は知らず知らずのうちに罪や咎(とが)を犯しているものですが、人という字が表す通り、人は紛れもなく支え合って生きているのです。 相手を思いやらない発言に、人は耳を傾けません。言葉には「人間性」が表れることを知ってほしいと思います。 一方で、言葉は人を動かすこともあります。君ならきっとできる―と、プラスのエネルギーを放つ言葉で励ます。そのことで人は、限りない力を発揮できるものなのです。 詩は、次のように結ばれます。 「ひとつのことばを 大切に ひとつのことばを 美しく」 言葉を大切にすることは、自分を大切にすること。自分の語る一字一句こそが自分の人生なのだと、自覚しながら語ることです。
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