北海道新聞旭川支社
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北極星

安川としお(士別・朗読パフォーマー)*声と言葉  2019/10/28

 声の出し方や話し方、朗読の仕方などについて、年齢の高い方々を対象に話す機会が何度かあった。

 声は、声帯を肺からの空気で振動させることで音になる。それを舌や歯、上下のあごなどを使って、さまざまな音に作り上げ、鼻腔(びこう)や頭蓋骨、胸の骨に共鳴させて、聞こえる言葉として聞き手に届けるものであるという基本的なことを説明した。その上で、腹式呼吸が精神に良い影響を及ぼすことや、圧力のある空気でしっかりと声と言葉を発することで、喉の周辺が活性化され、誤嚥(ごえん)の予防にもつながるといった効用についても話した。

 ところが、話の途中で自分自身の声が、左耳には気圧の変化で聴覚に異常を来した時のように聞こえてきた。ここ数年、朗読などの最中に、こういう現象に襲われることが増えてきた。右耳は大丈夫だが、不安は大きい。

 若い頃にも、ほとんどの奥歯が抜け落ちていたところへ義歯を入れたら、長いこと口の中であぐらをかいていた舌が義歯に押されて居場所を失い、舌をかまない発声に慣れるのに相当な期間を要したことがある。口の中や鼻、耳などの極めてデリケートな調整で声は作られている。しっかりとケアして、できるだけ長い間、響きのある声で言葉を発し続けたいものだと思っている。


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