お盆に農家の友人から電話があった。「スイカ畑にクマが出ているんだけど、自動撮影カメラを持っていたよね」。何か対策を打つというよりは「敵を見てみたい」という話だった。 早速、訪れた畑にはヒグマの足跡がベタベタ。親から独立したばかりの若者のほか、大きなオスの成獣が来ていることが見て取れた。スイカはいくつも割られていた。食い散らかされた赤い果肉が悲しかった。 畑は森と接している。クマが森の獣道を歩き、闇にまぎれて畑に出て腹を満たすには格好の環境だった。 3台のカメラを設置して9月中旬まで撮ってみた。クマは夜、午後8時~午前0時に畑に出て来ては、大きなスイカを軽々とくわえて歩き、食っていた。しかし居座るわけではなく、一晩写るとその後2週間は出て来なかったりした。クマの写真を見た友人は奥さんと顔を並べてのぞき込んで「おーでけえ!」などと笑っていた。 畑のその一角だけ何年も前からクマが来るという。夜中、ラジオを流しっぱなしにしてもだめ。点滅するライトを光らせてもだめ。クマのごちそうになってしまうのは何千個も収穫するうちのごく一部であることが「来ないでほしいけれど許容範囲」という姿勢になっているのかも知れない。そんなクマとの付き合いもあるのだなと思った。
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