北海道新聞旭川支社
Hokkaido shimbun press Asahikawa branch

北極星

谷紀美子(名寄・非常勤図書館員)*きっかけは「何となく」  2019/10/06

 三十数年前、当時住んでいた道東の公民館図書室の司書さんから手づくり絵本の講習会に誘われた。まぁ何となく参加してみた。

 講師は当時の網走管内で中学校で美術を教えるM先生だった。ドーナツやビー玉の描き方を教わり、製本の仕方を教わり、半日かけて1冊が完成した。思いのほか楽しかったし、自分で製本できることに驚いた。

 それから10年後、名寄の地元紙に「手づくり絵本の会会員募集」のお知らせが載った。主催はあのM先生だ。名寄市に短大教員として来られたのだった。偶然の再会に運命すら感じた。

 やがてM先生は退官し名寄を去るが、手づくり絵本の会はほそぼそと続き、秋の絵本展も毎年開催している。ひっそりと開催し観客も少ないが、M先生もはるばる来てくださるので、やめるわけにはいかない。

 私たちは毎週例会と称して集まり、手芸をしたりお茶菓子を食べたり…。もはや何の会かと問われれば「さぁ?」としか言いようがなく、作品もこれが絵本かと問われれば「たぶん…」と語尾を濁す。毎年秋風が吹き始めると「そろそろ作らないとまずい」と急に画用紙を広げるありさまだ。

 あの時講習会に誘われなければ、絵本(らしきもの)を作るなんてことは生涯なかっただろう。今この時期、切羽詰まりながらもそれなりに楽しい。


戻る