北海道新聞旭川支社
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北極星

奥野真人(焼尻・ゲストハウス経営)*厄介な台風  2019/09/30

 毎年のことながら、とりわけ今年は台風に翻弄(ほんろう)された。離島は船の欠航が付きまとう。宿泊業だけでなく、学生ボランティアの受け入れや漁業を夏の生業としている僕にとって、この暴君は厄介な存在だ。

 台風が近づくとまず、向こう数日の間に宿泊予定のお客さんへ、天気の状況や渡航ができない可能性を伝えなくてはならない。なにせ、船は当たり前に出てくれると思っている人が意外と多いのだ。状況を伝えると、お客さんのおよそ半数はその場でキャンセルを決めてしまう。

 ところが、その日の運航予定が発表されるまで諦めない猛者や、予定が狂うリスクを承知で島に渡り、帰りの船が欠航になってしまった難民もいる。中には島で楽しむために大量のお酒を買い込んだのにもかかわらず、羽幌港で欠航を知らされたお客さんもいた。

 つい先日の9月23日、この日は宿泊予約が多く、客室はほぼ満室になる見込みだったが、台風17号が24日に上陸する見込みだったため、大半がキャンセル。僕自身も仕方ないと思ったが、この予想は外れ、船は何事もなく運航された。本当に厄介な台風である。

 しかし、台風の後は得てして島の景色が抜群に美しい。突き抜けるほどきれいな空、濃淡を鮮やかに描く太陽光…。まさに台風一過。厄介なのに憎めない。


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