庭に初めてイチゴを植えた年のこと。少しずつ赤みを増し、あと数日で収穫かなという朝、カラスに全てやられていた。しょんぼりしていると、ご近所さんに「CDをぶら下げると良い」と教えられた。 半信半疑でやってみると、カラスはウロウロするもののイチゴは無事だった。カラスはとても賢いのに、どうしてこんなものが怖いんだろうねと笑った。 同じ年、検診でがんが見つかった。初期だったので生命に関わりがないことはわかっていたが、やはり不安だった。手術は成功したが、再発するかもしれないという不安は残った。そして1年後に、がんの手前である異形成が見つかり、また経過観察の日々が始まった。自然になくなることもあるものですよと言われたのに、悪い方にばかり考えて不安がっていた。 イチゴの季節がやってきて、またCDをぶら下げた。こんなものの何が怖いんだろうねえとつぶやいた時、ふと、私が怖がっているものはカラスにとってのCDなのかもしれないと気づいた。とたんにバカバカしくなり笑いがこみあげた。 あれから5年。異形成はすっかりなくなり、異常なしが続いている。今、あなたが怖がっているものも、もしかするとカラスにとってのCDかもしれません。
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