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北極星

國枝保幸(市立稚内病院長)*医者の看板 2019/06/30

 最近は医療に関するテレビ番組をよく目にします。名医を紹介する番組はなかなかの人気で、選択基準が曖昧ですが、名医を紹介する本も出版されています。名医を欲する願望の表れでしょう。プロ同士であれば医療の質の見極めは可能ですが、今の情報社会にあっても素人の目で判断するのは難しいと思います。それだけ医学は難しい学問とも言えます。

 昔、出張医として赴任をした際、私の専門である血液疾患の患者さんが緊急入院してきました。重症でしたが、ご本人は元気で全く言うことを聞かず、安静が必要なのに守ってくれません。業を煮やした後輩医師が「あの先生(私の事)は大学からの出張で、あなたが患っている病気の専門家である」と告げたようで、私が診に行くと「大学の先生かい? 俺の病気の専門家かい?」と尋ね、その後は素直に言うことを聞いてくれました。

 駆け出しの頃は医者としての評価は自分の能力で決まるとの思いから、日々精進を重ねてきましたが、その後、あちこちの病院に勤務して分かったことは、「医者の評価は背負っている看板で決まる」ということでした。一番評価が高いのは大学病院で、市立稚内病院の看板は一部の地元住民に敬遠されているのは動かし難い事実なのです。


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