北海道新聞旭川支社
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北極星

嶋崎暁啓(豊富・NPO職員)*研究者の後ろ姿 2019/06/16

 初夏のサロベツで研究者の調査に同行した。普段、私たちもあまり行かないような湿原の奥で行われている地道な研究。この日は丸一日の植生調査で、調査地までは凸凹で歩きにくい湿原の中を研究者は力強くどんどん進む。現地に着くとあまり動かずに調査する。実は見た目以上に過酷だ。背の高い植物に隠れている小さな植物を探し出すため、常に集中していなければならず、中腰や前傾姿勢なので腰や膝が痛くなる。

 それでも、サロベツに縁のある研究者は道内を中心に毎年全国の大学から調査に来て、植生、水文(すいもん)(水の循環)、気象などさまざまな分野に取り組まれている。中には学生時代から50年以上サロベツをフィールドに調査している研究者もいる。

 大学での忙しいスケジュールの合間を縫って現地へ通い、朝から晩まで調査して、疲れた体で札幌まで運転して帰る生活は容易ではない。しかも、時間と労力がかかるわりに研究成果が出るまでは何年もかかる。

 だが、長年にわたる調査の結果、サロベツ湿原の価値が見直され、国立公園になり、自然再生事業が進み、湿原の新たな面が明らかになってきた。今もこの地でひたむきに調査している研究者の方々を尊敬せずにはいられない。これからも研究が続くよう、地元にいる者として少しでも力になれたらと思う。


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