北海道新聞旭川支社
Hokkaido shimbun press Asahikawa branch

北極星

安川としお(士別・朗読パフォーマー)*眼瞼下垂(がんけんかすい) 2019/06/09

 演芸会の舞台化粧を頼まれた時のこと。年齢の高い人たちのアイラインを引く際、瞼(まぶた)の皮がたるみ、ラインが点線になってしまい、なかなかうまくいかなかったことを記憶している。

 50代を過ぎた頃から、自分の瞼も同じようにたるんできた。大衆演劇の役者さんたちは「目吊(つ)り」といって、額の髪の生え際付近をしっかりと縛って顔の皮をつり上げてからカツラを付ける事で、目鼻立ちをキリリとさせた。

 昨年、自動車運転免許の更新で高齢者講習を受け、左右の視界の広さが標準よりかなり狭いことを指摘された。もともと全身の皮がたるみ気味で、特に瞼のあたりのたるみ方がひどいことは自覚していた。

 数年前、瞼が垂れ下がって視界が狭くなってきた日本の高齢者が、美容整形手術のレベルが高い韓国で手術を受けるケースが増えているという雑誌の記事を目にして興味を持った。

 瞼のたるみを矯正する国内での手術には医療保険が適用され、日帰りでもできるため、受ける高齢者が増えているという報道にも接した。視界の拡大と併せて二重瞼にすることも容易だという。快適な視界は得たい。しかし、細い目と垂れ下がった瞼が光から目を守ってくれたのも確かだ。瞼のたるみが取れ、七十じいが涼しい眼光になるのは、気持ちが悪い気もする。


戻る