北海道新聞旭川支社
Hokkaido shimbun press Asahikawa branch

北極星

柴田えみ子(旭川・尊厳死協会道支部理事)*連行の旅 2019/06/03

 「沖縄の離島巡りの旅に行くので着替えを用意しておいて」。1週間前に突然、夫から言い渡されました。夫は時々こんな旅行を企てて私を驚かせます。私は沖縄の離島と聞いても、石垣島くらいしか知りません。調べる時間もなくその日はやってきました。

 心の準備も持ち物の用意もそこそこに、ほとんど連行状態です。ところが氷点下14度から27度の世界にひとっ飛びすると、縮こまっていた心身が急速に解きほぐされるのを感じました。三線の音色を聴きながら水牛が引く車に揺られると心地よい眠気に包まれます。背丈を超すサトウキビ畑では、ツアー仲間のOさんと肩を組んで一緒に写真を撮りました。

 聞くと82歳とのこと。夕食時には楽しくお酒を交わしました。その後知り合ったKさんも70代後半。はつらつとした2人のパワーに圧倒され通しでした。こんな人々との出会いと、次の場所を訪れるワクワク感は大きな刺激になります。帰宅後に写真を眺めると、Oさん、Kさんとの写真はみんな満面の笑み。ハイビスカスの赤い花や真っ白な砂浜、エメラルドグリーンの海がまぶたに浮かびます。

 初めは勝手に旅行計画を立てる夫にぶつぶつ言っていましたが、人々との出会いと美しい景観を満喫しました。次はどこに連行してくれるのかしら。


戻る