北海道新聞旭川支社
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北極星

嶋崎暁啓(豊富・NPO職員)*一つのサロベツで 2019/03/18

 サロベツ湿原はちょうど真ん中で、豊富町と幌延町に分かれている。すぐお隣同士の町だが、連携した事業というのは意外と少ない印象だった。だが先日、旅行会社のモニターツアーがあった。二つの町を周遊して楽しんでいただく企画だった。私も少しガイドをさせていただいたが、従来このようなツアーは一つの町で完結することが多かった。それは、2010年に幌延町が宗谷管内に入るまで管内が違ったことなど、一緒にやるには何かと課題が多かったからであろう。

 しかし、遠くから来る人にはあまり関係のないことで、それぞれの持つ魅力を存分に味わえた方がもちろん喜んでいただける。バイパスを使えば両町の市街地同士はわずか15分で、十分に通勤・生活圏内。元々この二つの町は大正から昭和初期に一つの村だったという歴史的背景もある。

 湿原はつながっており、渡り鳥など生き物にとっては人間が勝手に引いた「境界線」など関係ない。今回のツアーは準備や運営面で、両町の役場や観光協会の方々が多大な努力をされたからこその結果。手を取り合って連携していけたら、一層多くの方に湿原の魅力を伝えたり、保全活動を進めたりしていけるかもしれない。「いつか一つのサロベツで…」。ずっと願っていた姿が、少しずつ近づいてきている。


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