小学4年生になってクラブ活動が始まった。私は第1希望のバスケットボールに外れ、第2希望の百人一首にも外れ、なぜ選んだのかわからないマップトラベルクラブに入った。初日にクラブの教室に入ると、私以外は全員男子で、自分のくじ運のなさを呪った。 しかし、この面白さに私はすっかりハマってしまう。今、思えば鉄道好きな先生が自分の趣味で作ったクラブだったのだろう。 全員に時刻表が渡され、その日のテーマに沿って机上の鉄道旅行に出かけるのだ。例えば、東京駅発2泊3日の旅程。当時は寝台列車が多く走っていたから、新幹線に乗らずとも全国各地へ行くことができた。 4年生の私はダイヤをつなげるだけで精いっぱい。6年生の中には、まるで西村京太郎のミステリー小説のようなトリッキーな旅程を考える先輩もいた。 私はこのクラブで自然に都道府県や都市の名を覚え、行ったことがない土地の車窓さえも想像できるようになっていた。 大人になった今も時々マップトラベルに興じている。お金や時間がなくても、時刻表さえあればどこへだって妄想の旅へ出かけられる。先日、ラジオで、イライラするのは鉄分不足の証拠と聞いた。さあ、イライラしたらマップトラベルで鉄分補給してみませんか? あ、鉄分違いか。
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