北海道新聞旭川支社
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北極星

桑原隆太郎(名寄・文化団体事務局長)*平成の終わりに  2019/01/20

 敗戦4年後の1949年(昭和24年)生まれの私は今年、満70歳になる。古希の年を迎えて「われながら随分と長らく生きおおせたものだ」との感慨も湧く。そして時代は、昭和を経て平成の世が終わる。

 昭和は、私にとって高度経済成長さまさまだった。日々の暮らしも仕事も人間関係も「明日は今日よりも良くなる」と思えた。経済成長の恩恵なくして人生設計は描けなかった。恵まれた時代に巡り合わせたものとつくづく思う。昭和24年生まれは幸運だった。

 平成は違った。バブル崩壊、政権交代の実現と挫折、地方分権の不徹底、原発神話の延命、沖縄への米軍基地の押し付け等々、この国の明日が今日よりも良くなる、とはとても思えない。成長を追うのではなく、身の丈にあった成熟を目指すことが、平成には似つかわしかっただろうに。

 その平成の終焉(しゅうえん)を目前に「天皇の代替わり」に意識が向く。戦争責任を免責できない(と私は考える)前天皇から代替わりした現天皇が発した「お言葉」は衝撃的だった。象徴天皇制の意味と体現を追求し続けた実直さと、あくまで国民に寄り添おうとする誠実にして一徹な人柄に共感する。

 そして新天皇である。11歳年上の私の中には、「年下の天皇を迎える」という新鮮な感覚があり、それは新しい時代への漠とした期待感に通じる。そうした中に、私の70歳以降の人生が控えている。


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