北海道新聞旭川支社
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北極星

大槻みどり(富良野・カフェ経営)*ドラマチック根室本線 2018/11/05

 私はいわゆる乗り鉄で、列車に乗って出かけるのが好きだ。まるで昔話に迷い込んだような車窓の秋田内陸縦貫鉄道や、渓谷の中をスイッチバックしながら進む四国の土讃線など、心に残る路線がたくさんある。

 それでもやはり、日本一の路線は根室線だと断言できる。

 ディーゼルのキハ40が滝川を出発し、赤平、芦別とかつての炭鉱町を進む。長いトンネルを抜けると富良野。山を望み川を渡り、かなやま湖は左側の席で見るべきだ。狩勝峠を越えると広がる十勝平野。帯広では停車中に炭焼豚丼弁当を買いに走る。田園を進み、厚内(十勝管内浦幌町)を過ぎると、ついに太平洋が見えてくる。工業地帯を抜けると釧路。ここまでで8時間。乗り換えて根室まではさらに2時間半。エゾシカを避けて原野を進み、よくこんな所に線路を通したものだと先人に思いをはせる。

 2年前の台風被害で東鹿越―新得間が不通になる前は、滝川―釧路間に「日本最長距離を走る普通列車」が走り、全国から来た鉄道ファンでにぎわった。

 現在、富良野―新得間は維持困難な路線として廃止の危機にある。経済的なこと、政治的なこと、いろいろあるのだろう。でもやっぱり、日本一の路線はなくしてはいけないと思う。こんなにドラマチックな旅は、どこにもないのだから。


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