9月下旬に沖縄に行ってきた。知事選で辺野古新基地建設反対を訴えた候補を応援するためである。選挙結果は周知の通りで、沖縄県民の良識が民意の底力となっての勝利だと思う。 現地での熾烈(しれつ)な選挙戦を垣間見る中で私が実感したことの一つは、8月8日に急逝した翁長雄志(おながたけし)前知事の政治姿勢に対する県民の信頼の深さだった。 前知事に関する月刊誌追悼記事によると、氏が東京での大学生時代に熟読した書籍に、先駆的な自治体理論を提起した松下圭一氏の「市民自治の憲法理論」があったという。同書の一節に、「市民自治から出発する憲法の意義設定は、…中央政府にたいする自治体政府の独自性を提起し、憲法理論のラジカルな転換をうみだしていく」とある。 市議、県議、市長、知事を歴任した翁長氏。生涯を通じた自治体政治家としての見識と行動の底流に、この市民自治に根差した自治体政府の憲法観があったように思う。 米軍基地の沖縄への過重な集中は、どう考えてみても理不尽である。「辺野古移設が唯一の解決策」と強弁し続ける中央政府に対峙(たいじ)した翁長氏は、新基地建設阻止に文字通り命を賭して「自治体政府の独自性を提起」したのではないか。氏の生きざまを通して、沖縄の米軍基地問題が自治体の存在意義にかかわる事柄でもあることに思いが及んだ。
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