北海道新聞旭川支社
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北極星

安川としお(士別・朗読パフォーマー)*同期会 2018/10/08

 70歳を記念しての小学校・中学校合同の同期会を前に、希望者による市内見学を行った。士別の市街地区の西側に位置し、かつて戦後開拓者が多く入植した学田地区にバスが差し掛かった時、この地区に住んでいた村田三雄君の事が話題に上った。

 彼は実に自由奔放な自然児で、学校の時間割などは意に介さず、時々姿をくらまし、先生方だけでは足りず生徒も動員されて捜索することが何度もあった。発見されるのは、そう遠くはない河原や小高い丘などののどかな場所だった。彼は決して悪びれず、何事もなかったかのように、夏も吹雪の冬も7キロほどの道を通学し続けた。

 そんな彼について忘れられない記憶は、下草刈りの事だ。学田地区にある中学校の学校林で学校行事として草刈りをするのだが、その時彼は両手で使う大きな鎌を持ってきて、見事な手際で草を刈った。周りにいた者は驚きのまなざしで彼を見つめ、その時の彼の瞳はこれまで見たことのない輝きに満ちていた。

 同期会には、かなりの数の男子生徒がそのコブシの洗礼を受けたK君が、中学卒業以来初めて姿を見せた。彼の顔にはニキビもアバタもなく、握手した手は柔らかだった。昭和30年代という良い時代に小中学生だった幸せを、みんなでかみしめて会を終えた。


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