スーパーカブは荷物が積めて頑丈で、燃費も良く、旅する学生に大人気。夏になると、そんな若者が全国からやってきて、私のカフェにも立ち寄ってくれる。

 長い夏休みを道内で過ごし「そろそろ帰ります」と再び現れた彼らは、たくましく、自信にあふれ、たった数週間なのにひとまわり成長していて私を驚かせる。そしてキラキラした瞳で旅の話をしてくれるのだ。

 「旅でカッコイイ大人にたくさん出会いました。『若い貧乏旅人だった頃に僕もずいぶんしてもらったんだ』と、初対面で食事をおごってくれた初老のライダーさんや、『まだまだ行きたい場所がある』とお金をためては海外を旅している４０代は、中卒だけど４カ国語がペラペラでした」

 「人見知りなんて言っていられない、困った時は誰かに助けを求めて、見知らぬ人の親切に泣きそうになることもありました。苦手だった牛乳もトマトも、こんなにおいしかったっけ？って電話で親に言ったらビックリされました」

 「大学３年の今、就活するにも進学するにも、やりたいことがなくて逃げるように旅に出てきたけど、今はあんな人生もいいな、こんな人生もいいなって、ワクワクしかないです」

 かわいい子には旅をさせよ。もちろん一人旅。できればカブで。大昔の女学生が富良野で待っています。