北海道新聞旭川支社
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北極星

 稲荷桂司(旭川・公務員)*庭の小宇宙 2018/08/19

 日頃ぐうたら亭主を決め込んでいる私だが、久しぶりに家の敷地の草取りをした。さして立派な庭でもないが、それなりに面白いものが見つかるので楽しみながら作業をした。

 例えば家の基礎の周りには、やたらとカタツムリの殻が転がっている。カタツムリは殻をつくるカルシウムをとるためにコンクリートをなめると聞く。そのために家の基礎に来て、何らかの理由で死んだものだろう。色や形が同じ殻ばかりなので、みな兄弟なのかと想像した。

 また庭のれんがの周りには、かなりのコケが生えていて、土との境目が見えなくなっているところも多い。こうなるとれんがと庭が一体になったようで不思議な感じだ。もともとコケが好きで、山歩きなどをするとつい見とれてしまい、娘から「ホントに好きだねー」とあきれられることも。草取りの合間にこんな様子を間近で見ていると、全く飽きない。

 このカタツムリといい、コケといい、小宇宙を神様の視点で見ているような気分になる。そしてハッとわれに返ると、生身の人間である感覚が急に戻ってきて、しばらく戸惑ってしまうことがある。

 ささやかな庭でもこんな「探検」ができるのはありがたい。だからといって毎週草取りをするかというと・・・。


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