北海道新聞旭川支社
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北極星

 安川としお(士別・朗読パフォーマー)*川辺の記憶 2018/07/22

 幼い頃、土用の丑(うし)の日には、父の呼び掛けに応じた近所の人たちと連れ立って、士別市内の天塩川の河原に出掛けた事を鮮明に記憶している。

 リヤカーに炭やゴザ、鍋、食器、食べ物、飲み物を積み込んで河原に行く。水遊びをしたり鍋をつついたりして、夏の日差しを浴びながら一日楽しみ、陽が傾く頃に帰るのだ。食べた魚はウナギではなく、川で捕ったドジョウだった。

 場所は現在のつくも水郷公園の貸しボートがある辺り。池はその頃は天塩川の本流で、流れが蛇行していて氾濫することもあった。

 飼っていた3匹の犬は、暑さを避けて川に入り、見事な犬かきで戯れ遊んでいた。酒が進むと手拍子とともに歌も出る。近くでは砂利採取業者が人力で川砂利を掘り上げ、ザラザラとふるいに掛けて選別していた。川べりの岩場には岩ツバメの巣があり、飛び交う姿も見られた。川と並行して、朝日町につながる士別軌道の線路があり、原木を積んだ軽便列車が汽笛を鳴らして通り過ぎていく。豊かな時の流れがいとおしい。

 家族との懐かしい記憶の場所はその後、水郷公園になり、たくさんの家族の充実した時間を生む場所に変わった。今年、公園のリニューアルが完了したが、これからも多くの家族の楽しい記憶を紡ぎ出す場であり続けてほしいと願う。


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