北海道新聞旭川支社
Hokkaido shimbun press Asahikawa branch

北極星

 大橋美智子(旭川・農業)*山菜の季節に  2018/06/17

 今年、久しぶりにフキを塩漬けにした。冬期間のうれしい保存食になる。

 農地の周りに山菜はいろいろあるが、山菜の旬の時季は農作業が最も忙しい時と重なる。若いころは、代かきをしている夫のトラクターがあちらを向いた隙に、近くの沢を駆け下りて大急ぎでフキやウドを採ったものだ。今そんなことを企てようものなら、足がもつれてけがをするがオチだ。山菜に向かう思いに、重い体がブレーキをかける。

 父が農業現役の時は、国の施策で増やせ増やせと、山を削ってまでして水田を造った。傾斜地の水田は、あぜばかり大きくて石が多く、所々に冷たい水が湧き、耕作にはとても苦労した。しかし、あぜにはたくさんの山菜が育っていて、その時季は通うのが楽しみだった。

 今はコメ余りの時代。条件の悪い水田はあぜを崩して畑への転換が進んでいる。段々だった水田は、だだっ広い1枚の畑になり、あぜの山菜も姿を消した。

 広い畑の向こう端まではおよそ200メートル。畑に転換してから、一度も行ったことがなかった。昨年、犬をお供に連れて初めて、まき付け前の畑を横切って行ってみた。

 驚いたことに、何もないと思っていたその場所には、行き場をなくした湧き水が現れ、一面に青々としたフキが育っていた。


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