最近あまり本屋に立ち寄ることができず、出版事情に疎くなっていたが、漢和辞典「角川新字源」の改訂版が昨年10月に発刊されたのを知り、つい買ってしまった。 この辞典はコンパクトながら専門的との定評があり、中国哲学を専攻していた学生時代に先輩から勧められ使っていた。漢文には、英語の前置詞のような役割を持つ「於」「与」などの助字がある。巻末に詳しい解説がまとめられ、重宝したのを思い出す。今回の改訂では掲載手法が変わったものの、内容は一層充実したものになっていた。 最近は紙の辞書が電子辞書に取って代わり、古本屋では新品同様の辞書が二束三文で売られている。高校の授業でも電子辞書が推奨されていると聞く。 確かに重い辞書を毎日持ち歩くのは大変だろう。だが、私の高校時代はみな辞書を2冊買って、自宅と学校に置いていたものだ。こんなことを思うと、「オレの若いころは―」と言うオジサンになったようで軽く落ち込んだ。 それはともかく、こんなご時世に改訂版を出すという骨太な企画を実現した出版社には頭が下がる。改訂作業には10年かけたという。私も愚痴ってばかりいられない。わが子らにも辞書をめくる楽しさを教えよう。親のスマートフォンをいじりたがらないうちに。
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