北海道新聞旭川支社
Hokkaido shimbun press Asahikawa branch

北極星

 有村幸盛(旭川・文化団体事務局長)*うろたえるな 2018/04/08

 最近、家の中の不用品を整理していて、気になっていた新聞の切り抜きが見つかりました。それはごみになりかけた段ボール箱に入った昔のスクラップブックにありました。9年前に掲載された俳優・仲代達矢さんのインタビュー記事です。

 私は楽観的な性格のせいか、日ごろはあまり悩むことがありません。それでもたまに「どうしよう」という事態に遭遇することがあります。そんな時に思い出すのが、記事にある仲代さんの「うろたえるな」という言葉だったのです。その一部をここで紹介します。

 仲代さんは子供のころに父親を失い、極貧の生活を送ったこともあって、役者になってからシェークスピアの「ハムレット」だけは好きでなかったそうです。

 「生きるか死ぬか、それが問題だ―なんて、そんなの、言っている自体がおかしい。なんでそんなことで悩むんだ、と。こちらはガキのころから食えなくて、毎日空襲にあって逃げまわっていたんです。役者になって、売れたり売れなかったり、苦しいこともありました。そんな私がいつも思うのは『人間、太陽がある限り生きていける』ということです。うろたえちゃ、いけません」

 改めて読み直して、単に困った時に使う言葉ではなく、生き方そのものを問いかける言葉だということを知りました。


戻る