ようやく雪解けを迎えた今、この冬は久々に雪が多かったなぁと思い返す。 とはいっても、礼文島は周囲を海に囲まれているため、冬でも内陸部よりは温暖で雪もそれほどは多くない。ただ、最近見つけた文献によると、この島はなだれの多い場所として古くから知られていたようだ。 それによると、礼文島は急斜面の海岸段丘が多く、冬季の強風によって斜面に吹きだまりや雪庇(せっぴ)ができるため、気温が上がるとなだれが起きやすいという。 記録に残る最も古いなだれは1902年(明治35年)。この時は4軒の民家が被害を受け、4名の人命が失われた。その後、1996年までの95年間に合計33件のなだれが起き、69名もの人命が失われている。記録に含まれない1901年(明治34年)以前を合わせると、さらに数が増えるに違いない。 また、なだれの件数や失われた人命は、隣の利尻島と比べると約2倍にもなるが、この差は島の地形が大きく関係している。山の麓に広い裾野を持つ利尻島に比べ、平地がない礼文島では、人々は急な崖と海とのわずかな場所に居住せざるを得ない。したがって、なだれが起きると逃げることもままならず被害にあってしまうのだ。 自然とは、人にとってやさしくもあり厳しくもある。そんな現実をさまざまな資料や記録が改めて思い起こさせてくれる。
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