北海道新聞旭川支社
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北極星

 大橋美智子(旭川・農業)*おひなさま 2018/03/20

 今年、自宅の納戸に何年もしまったままだった、おひなさまを久しぶりに飾った。昨年、娘に女の子が生まれたのだ。孫のおひなさまは今どきのコンパクトなタイプなので、自宅の七段飾りを見せてあげたいと思ったのだ。

 納戸の奥からかき分けて、ようやく取り出した大きな箱三つ。ひな壇を組み立て、お道具を丁寧に並べた。優美な姿のおひなさまを前に、娘が子供だったころを思い出し、夫との会話も弾んだ。

 3月3日は娘の誕生日。今年は孫の初節句が重なった。そしてこの日は、2年前に亡くなった私のいとこの命日でもある。

 今年の法要の席で、住職が書家で詩人の相田みつをさんの作品を紹介してくれた。「あのときの あの苦しみも あのときの あの悲しみも みんな肥料になったんだなあ じぶんが自分になるための」

 この詩を聞いて、還暦を迎えた私は思わずうなずいた。これまでに、いくつものつらいこと、悲しいことを経験したからこそ、いまの幸せを感じることができるのでしょう。

 娘夫婦の子育ては始まったばかり。初節句のお祝いの席で「これからの子育て、長いよ、大変だよ」とつい言ってしまった。一言足りなかった。「それ以上にうれしいことがたくさんあるよ」と。


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