「尊厳死」というと、末期医療の選択と捉えられがちですが、焦点はいかに生きるかという生き方にあります。死は生の延長線上の一点でしかありませんから、死を考えることは生を考えることにほかなりません。つまり尊厳死とは、人の生死を含む広く深い概念といえます。 また、死は年寄りのものばかりではありません。若い人の事故や病気もあり、遅かれ早かれ誰にでも100%の確率で訪れます。 昔は食べられなくなると、木が枯れるように自然に死んでいったものです。しかし現在は、医療の発達が皮肉にも苦痛を増す延命治療をもたらしています。まずは終末期医療に対する意思表示が大事です。これを怠ったために悲惨な死を余儀なくされる人が何と多いことでしょう。 日本尊厳死協会の顧問には元首相の小泉純一郎さんや作家の吉永みち子さん、脚本家の倉本聰さんらがいます。「元気なうちに最後の『判断』をしておきたい」「健康でも元気がなくなると判断はできなくなる」―。会報で先日、倉本さんはそう語っていました。 これこそが重要なポイントです。「縁起でもない、まだ大丈夫」と退けず、気力のある今のうちに、真剣に自分の死と向き合ってみることをおすすめします。自分の人生を最期まで責任を持って生きるために。
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