北海道新聞旭川支社
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北極星

有村幸盛(旭川・文化団体事務局長)*読み継がれる詩  2018/01/23

 「飛ぶ橇(そり)」という詩をご存じですか。旭川ゆかりの詩人小熊秀雄が書いた長編叙事詩です。自然の豊かさと厳しさを背景にアイヌ民族の権太郎と若い山林官の交流がテンポ良く、ドラマ的に描かれています。800行という長い詩ですが、1月28日に旭川西高演劇部が市内の喫茶店で、2月には劇団「河(かわ)」がまちなかぶんか小屋を会場に、いずれも群読という形で朗読します。

 先日、劇団「河」の稽古を見学しました。コンパクトに再構成された台本をもとに4人の若者による稽古が始まります。やがて、演出の星野由美子さんの「待て!」がかかり、「もっと腹から声を出せ」「間を考えろ」とダメだしが入ります。ちょっとした間とか声のトーンとか細かいところもいっさい妥協しない。そんな90歳の演出家はどこにもいないかもしれません。

 昨年10月から週3回、3時間の稽古を重ね、厳しい演出家の注文にも音を上げない若者たちも、何かすてきな空間に遭遇したようでした。劇団「河」は、同じ小熊秀雄の長編叙事詩「長長秋夜(ぢゃんぢゃんちゅうや)」も朗読します。

 高校生たちの稽古は見ていませんが、今まで小熊秀雄も知らず、詩の朗読も体験したことのない若者が83年前に書かれた詩を朗読するという事実だけでも感動しています。そして、この詩に新しい命が注ぎこまれるような気がしています。


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