北海道新聞旭川支社
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北極星

 大橋美智子(旭川・農業)*大人になった 2017/12/26

 冷蔵庫の扉を開けると、いきなり頭に何かがぶつかった。あっ、と落ちていくものを見ながら体が動かない。ジュースだ、と思うと同時にガラス瓶は床に落ち、中身のしぶきとともに粉々になってあたり一面に飛び散らかった。

 痛いおでこを押さえながら、しばしぼうぜん。誰がこんなところにガラス瓶を入れたのか。ここは怒るべきか。待てよ、私の扉の開け方にも問題があったのかもしれない。いやしかし、こんな不安定な場所に背の高い瓶を入れる方が悪い。いや、贈られたジュースをいつまでも片付けなかった自分も悪いのだ。

 みるみる腫れてくるおでこをさすってそんなことを考えていると、茶の間から「あんたも大人になったね」と夫の声。

 夫の言いたいことはよくわかる。今までの私なら瓶が落ちた瞬間、手でつかまえることはできなくても素早く足を出して受け止め、ワンクッションはさんでから着地させていたはずだ。そして同時に「誰がこんなところに入れたの」と怒鳴っていた。

 瞬間に体も動かず声も出せなかったことがショックだった。しかし、それで褒められたから良かったのか。昨年、夫婦そろって還暦を迎えた私たち。年をとることは悪いことばかりではない。慌ただしい年の瀬こそ、この調子で心穏やかに暮らそう。


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