北海道新聞旭川支社
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北極星

 森川理加子(士別・演劇集団主宰)*冬の外出 2017/12/21

 私が働く実家の農場は、冬になると吹雪で陸の孤島になってしまうような山奥だ。おかげで独身の頃はよく怖い思いをした。

 夜遊びに出かけ、帰ろうと思ったら道がない。電柱やポールを目印に勘で車を進めても、あまりの雪の深さに車がはまって動かなくなる。こうなると諦めが肝心で、雪はねをしながら進もうなどと思ってはいけない。潔く市街地へ戻り、友人宅に泊めてもらう。除雪車に車ごとはねられそうになったり、暖を取るためエンジンを動かし続けて一酸化炭素中毒になりかけた経験から言えば、それが生き残るための最善の策である。

 大雪の時には無理をしない。できれば外出しないことだ。というわけで冬の私はドタキャンの女王である。こう見えて意外と慎重なのだ。

 しかし、結婚して私は油断した。市街地に住むと山奥と違って帰宅できないことはない。先日の大雪の日もうっかり出かけて家の鍵を忘れるというポカをやらかした。

 不運にもその日、夫と娘は私の実家で過ごしていたため、家の中から鍵を開けてくれる人はいない。ダメ元で山奥の実家に向かったが、車は途中で立ち往生。何度経験してもこれは怖い。仕方なく引き返し、友人宅で世話になった。

 やはり冬の外出に油断は禁物。もちろん家の鍵も忘れてはいけない。


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