北海道新聞旭川支社
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北極星

 安川としお(士別・朗読パフォーマー)*祝祭としての文化祭 2017/11/21

 いつの頃からか、各地域で開催される文化祭行事で、芸能発表や作品展示と合わせて、農産物や軽食類の販売を行うことが多く見受けられるようになった。このことについて私は、食べ物で人を寄せるのは市民文化活動の本筋から外れるやり方だと、深く考えもせずに断じてきた。

 しかし、数年前、この考えは全くの誤りであることに深く気付かされた。

 小学校の体育館で午前中は保育園のお遊戯会と小学校の学芸会が催され、午後は文化祭の芸能発表が行われた。昼食時にはそばや雑煮などが振る舞われ、子どもたちの家族だけでなく、地域の人たちや地域を離れた人たちまでもが笑顔で集った。秋の実りの食べ物に舌鼓を打ちながら談笑し、舞台では歌や踊りに興じる。その場所はとても豊かな空気に満ち満ちていた。

 そもそも芸能は、農耕や狩りの恵みに感謝する祝祭の中で、ごちそうを食べ美酒を酌み交わす内に即興で詩を吟じ、演じ踊ったのが始まりであり、食と芸術文化は極めて近いものなのだ。

 地域の集落に生きる人が急速に減少していく中で、人々が集い文化を謳歌(おうか)することは素晴らしいことだ。こだわりを捨て、文化祭や物産展や収穫祭などがもっと融合して良い。飲み、食べ、歌や踊りに興じて、秋の実りを謳歌する地域であり続けてほしい。


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