北海道新聞旭川支社
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北極星

 柴田えみ子(旭川・尊厳死協会道支部理事)*幸せな記憶 2017/11/16

 私は人より記憶力が無いほうだ。旅行しても、どこへ行ったのか、何を見たのか、何を食べたのか、ことごとく忘れてしまう。夫があきれるくらいだから相当だ。ところが、そんな私でも覚えていることがある。

 四国旅行の時だったと思う。お土産屋さんで買ったミカンがバスの中で、ごろごろ転がった。バスが上り坂に達したところだったので、後ろの席まで転がっていった。「わあー、私のミカンが」と思わず声に出てしまった。車内は笑いの渦。みんなが拾っては手渡してくれた。

 大阪城では、見学後バスに戻る道を迷い、出発時間ぎりぎりになってしまった。夫と2人、走りに走ったが、目の前にとんでもなく急な階段が現れた。必死の形相で駆け上る私たちを見て、手をつないだ若者が「わぉ!」と叫んだ。地獄だった。

 もう一つは、沖縄だ。見学後、違う観光バスに乗ってしまったのだ。巡るコースの違う同じ会社の観光バスだった。自分の席を探してうろうろしているところに夫が飛びこんできて無事生還。こうして振り返ってみると、私の記憶は強烈なハプニングしか残っていないことに気がつく。つい夫に愚痴ってしまったところ「後で思い出した時に笑える記憶って、幸せなんじゃないの」とおかしな慰め方をされてしまった。


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