樹木や野生動物の調査で一日中、森を歩きまわる友人たちは言う。 「歩きやすいところを探して歩いていたら結局、シカ道をたどることが多いよね」 森の深くまで入るとき、まずは地図や現在位置を示してくれるGPS(衛星利用測位システム)を使って地形を確認する。さらに周囲をよく観察して、沢や尾根の実際の形を読み、遠回りになったとしても安全で体力を消耗しないルートを探す。 無理をしてけがをしたら、すぐに助けを呼べる場所ではない。滑り落ちる可能性のある急斜面は、近道だと分かっていても禁物。平坦(へいたん)でも日当たりのよいところは背丈くらいのササが茂って、徐々に体力を奪われるので、これもできれば避けたい。 そうやって機器に頼りつつ、自身の知恵と経験で判断を繰り返して森の奥へ分け入ると、シカ道に合流することが度々ある。 エゾシカたちが何度も歩くうちにササや草が踏まれて、土が露出した道が続いている。斜面の「弱点」を見事に読んだトレースは無理なく沢や尾根をつないで歩きやすい。 これ以上進むと斜面が急になるので、ここらへんで尾根に上がろうか、と思うまさにドンピシャの地点で、シカ道もその方向へ進路を変える。その野生の判断に大いに共感するのだ。 |